横浜地方裁判所 昭和38年(ワ)1074号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔争点〕原告らが請求原因として
(一) 被告大光電機工業株式会社(以下被告会社という)は蓄電池の製造修理及び販売、各種電装品の修理及び販売等の事業を営む会社であり、被告仲田由男(以下被告仲田という)は被告会社に雇われ自動車運転の業務に従事していたものであるが、
(二)(1) 被告仲田は被告会社の得意先廻りをして飲酒酩酊した上被告会社保有の軽四輪車(三七A四三〇四六)(以下被告自動車という)を運転し、
(2) 昭和三八年六月一六日午後五時四〇分頃、川崎市西小田町二二番地先の道路上を原告末永俊治が原動機附自転車(以下原告車という)を操縦し車台に妻原告すぎ長女原告祐子を乗せ進行してゆくのを見付け、
(3) その後方から四、五メートルの間隔を取り、女をからかう野卑な声を挙げながら追従して来たが、突然スピードを上げ原告車を右側から追越すやハンドルを左に切つて原告車の行く手に立ち塞がつた。
(4) 原告俊治は衝突を避けるべく急拠ハンドルを左に切つたところ道路左側のブロツク塀に激突し、原告俊治ら三名はその場に転倒し、原告俊治は右肩胛骨々折等で全治五〇日、原告すぎは右第四肋骨々折等で全治一ケ月、原告祐子は顔面及び大腿挫傷で全治一〇日間の各負傷をした。
(三) 被告会社は被告仲田を被用者として、その会社企業のために保有する被告自動車を運行の用に供しているうち右事故(以下本件事故という)を起したのであり自動車損害賠償保障法第三条により原告らに対してその被つた損害を賠償すべき義務がある。
仮りに同法の適用がないとしても本件事故は、被用者被告仲田の職務中同被告の故意過失により発生させたもので被告会社は使用者として民法第七一五条による賠償責任がある。」と主張したのに対し、被告会社は、
(1) 被告仲田の本件自動車の運行は被告会社のためになされたものではない。
即ち昭和三八年六月一六日は第三日曜日で被告会社の定休日であり被告仲田が勝手に本件自動車を持ち出し私用に供したものである。
(2) 被告仲田は被告会社の事業の執行について事故を起したものでもないから被告会社に使用者としての責任もない。被告仲田は第三日曜日の休日に友人の宮下末吉のところへ被告会社から勝手に持ち出した本件自動車で遊びに出かけ右宮下と食事に行く途中本件事故を起した。したがつて被告会社の業務とは何ら関係がない」と争つたものである。
〔判決理由〕一、請求原因事実の(一)、(二)の(2)は当事者間に争いがない。
二、請求原因事実(二)の(1)、(二)の(3)及び(二)の(4)につき
<証拠>によれば、
本件事故当日は日曜日で被告会社も休みのため被告仲田はその友人宮下方へ遊びに行き同人方で午後五時頃まで相当量(日本酒二合位)飲酒した上、夕食のため行きつけの食堂に行くべく自ら本件自動車を運転し、請求原因事実(二)の(2)記載の道路上を進行した際、同(二)の(2)記載の如き状態で進行して行く原告車を発見し、その後から追従し、被告自動車の同乗者宮下は原告らをからかう声を発し、被告仲田も酔余相乗りの原告らを椰揄するため故意に被告自動車を道路左側に原告車とすれすれの処まで寄せ右側から追越すやハンドルを左に切つて原告車の行手を塞いだ。原告俊治は被告自動車との衝突を避けるためハンドルを左に切つたが被告自動車はなおもかぶさつて来た。道路の左側はコンクリートの塀になつておりそれに衡突するのを防ぐべくハンドルを右に切つたところ被告自動車と衝突し原告ら三名はその場に転倒した事実が認められ、被告仲田本人尋問の結果中右認定に反する部分はたやすく採用し難く他に右認定の妨げとなる証拠はない。<中略>
三、請求原因事実(三)につき
<中略><証拠>を総合すれば、
被告会社はその従業員の各々にその所有に係る特定の車を当てがい、被告会社の業務である出張修理の用に供さしめ、多忙のときは従業員の通勤に使用すこともあり、車の鍵は被告会社に保管してあつたが係の者に一応断れば私用に用いることが許されていたという事実が認められる。
理由の一及び二に示した事実及び以上認定の各事実にもとづいて自動車損害賠償保障法第三条の立法趣旨並びに民法七一五条に関する判例法の推移を併わせ考えるならば、本件事故を生じた被告自動車の運転は被告会社の休業日たる日曜における被告仲田の私用のためのものではあるが、右に認定した日常の被告会社の自動車の運転及び管理状況等からして客観的、外形的には被告会社のためにする運行と認められるので被告会社は本件事故について「自己のため自動車を運行の用に供する者」というべく自動車損害賠償保障法第三条の適用がある。(昭和三九年二月一一日最高裁判所判決、最高裁判所判例集一八巻二号三一五頁参照)(久利馨)